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マーク・カーニー氏のロイズでの講演 ~2015年が歴史の転換点であったとあらためて認識~

 イングランド銀行総裁で金融安定理事会(FSB)議長だったマーク・カーニー氏が2015年にロイズ保険組合で行った講演「ホライゾンの悲劇を打ち破る - 気候変動と金融の安定」(Breaking the Tragedy of the Horizon - climate change and financial stability)をYouTubeで視聴しました。この講演をきっかけに歴史は大きく動いたと言われています。

 カーニー氏は次のように述べて、金融機関が気候変動リスクに対応しないまま突如、これが顕在化し、金融システムに甚大な影響を及ぼすことに強い警鐘を鳴らしました。

The challenges currently posed by climate change pale in significance compared with what might come. The far-sighted amongst you are anticipating broader global impacts on property, migration and political stability, as well as food and water security. So why isn't more being done to address it?

A classic problem in environmental economics is the tragedy of the commons. The solution to it lies in property rights and supply management.

Climate change is the Tragedy of the Horizon.

 "あなた方の中の洞察力に富んだ方(The far-sighted)は予測している"は、ロイズによる前年の調査報告書(Feast or famine)で気候変動は食糧安全保障上の重要な供給サイドの問題としていることを念頭においています。
 ホライゾンの悲劇(Tragedy of the Horizon)は、リスクを十分に認識していながらも、短期的な思考に基づきそうした課題に対する適切な対応を怠ることでもたらされる市場の失敗を意味しています。この新たな造語はコピーとして人々に強烈な印象を残したように思います。この講演の2年後の2017年6月に公表されたTCFD最終報告書(宛先はマーク・カーニー氏)は、気候変動の開示基準として多くの組織で支持を集めています。
 また、2015年はSDGsが国連で採択された年でもあります。SDGsとセットで語られることが多いESG投資ですが、TCFDは今もその重要な開示基準の一つとして様々な動きが伝えられています。

 ホライゾンの悲劇(Tragedy of the Horizon)は、金融セクターに向けられた警鐘ですが、TCFDに基づく開示は、国内では非金融セクターでも増えています。非金融セクター、特に建設や住宅関連の企業ではどのような取組みが行われているのか、別途取り上げたいと思います。
 
2015年の持続可能な社会に関連する国際的な取組み
2015年 9月15日 ISO 9001/14001:2015年版発行
9月16日 日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESGに配慮する国連責任投資原則(PRI)に署名
9月25日 SDGs(持続可能な開発目標)採択
9月29日 マーク・カーニー氏がロイズで気候変動リスクに関する講演
12月12日 パリ協定採択
 英国中央銀行総裁マーク・カーニー氏のスピーチ全訳 | 一般財団法人 地球人間環境フォーラムはこちら

2021-06-15