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シリーズ再発防止策あるある(1):「複数人でチェックする」は要注意 |
<再発防止策は妥当だったのか>
日経新聞(9/13付)に、「入管また開示ミス 入国審査要領、黒塗り読める状態」という見出しの記事が出ていました。4月にも同様のミスがあり、その時には法務大臣が記者会見で、「再発防止策として複数人で確認する措置をとる」とコメントしています。
行政に限らず、民間企業でも何かトラブルがあると再発防止策として、「複数人でチェックをするようにする」というのはよく耳にすることです。ダブルチェックでもミスが発覚しトリプルチェックに変えたという報告をかつて聞いたこともあります。
でも、これらの「複数人でチェックする」は曲者です。もっとはっきり書けばそのことに原因があった可能性があると考えています。何故なら、それぞれの役割や責任の所在があいまいになるからです。
<役割と責任は明確に>
こうした事故を防ぐには、
・作業者によるチェック
・検品者によるチェック
・管理者による承認
と役割を明確にして、今行っているチェックは何なのかを意識付けさせることが重要です。通常は検品者に重要な責任を持たせ、上位者を充てるのが順当でしょう。
念のために付け加えておくと、「クロスチェックを行うようにする」というのも要注意です。作業者によるチェック段階でのクロスチェックはOKですが、作業者と検品者の相互チェックをもってクロスチェックと呼んでいる場合は問題があると考えるべきだと思います。「作業者として問題のないレベルに達しているので、責任者としての確認(検品)を行ってください」という管理プロセスを構築するのが妥当だと考えます。
<確実な事故防止の仕組みづくりを>
もとより、提供する媒体内の文書の黒塗りが外れるかどうかをチェックするというのは生産的とは言えず、高いモチベーションを維持するのは困難な作業と言えます。技術的な対応と手順の見える化で、ヒューマンエラーが起きない仕組みを構築することが重要です。
特定部局の問題と捉えていると、同様の事故はまたどこかで必ず起こると断言できます。
ISO9001:2015関連箇条 8.5.1 製造及びサービス提供の管理
※以上は、あくまでも新聞情報に基づくコメントであることをお断りしておきます。
◆新聞記事の要約
・職員向けの文書を外部に開示した際、黒塗りすべき非開示部分が読めるような状態になっていた。
・今回明らかになったのは、入管職員が審査する際の注意点などをまとめた「入国・在留審査要領」で、第1~17編に分かれているうちの第6編「上陸審査」。
・9月にPDF形式のファイルをCD―Rで提供した際、非開示部分に目隠しをするために塗った色が薄く、はっきり読める状態だった。
・担当職員が誤って内部用のデータをCD―Rにコピーした可能性が高く、チェック担当の職員2人も文書を十分確認しないまま開示してしまった。
・法務省は「開示文書の取り扱いについて慎重を期すことになっていたのに徹底できていなかった。誠に申し訳なく、再発防止を徹底したい」と話している。
・4月にも同要領の第12編「在留許可」の開示ミスが発覚。PDF上で黒塗り部分をコピーし、ワードなど別の文書ソフトに貼り付けると、黒塗りが外れて本文が読める状態だった。
・上川陽子法相が記者会見で「誠に遺憾。再発防止策として複数人で確認する措置をとる」と話していた。
2018-09-14
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