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「企業文化に対する監査」について考える(その2)~第三者委員会調査報告書から学ぶ~

 今回は、問題が起きた時に設置される第三者委員会等の調査報告書から得られた知見を監査に活かすおススメの方法についてご紹介します。

1.調査報告書を調べる方法
 第三者委員会調査報告書は、第三者委員会ドットコムが2012年からのデータを公表しています。
 http://www.daisanshaiinkai.com/
 2021年に限っても公表された報告書は17件あり、いずれも数十ページ以上のボリュームがあります。専門家でもなければこれらを読み解いていくのは効率的ではないかもしれません。そこで入門書としてお勧めしたいのが次の書籍です。
 第三者委員会報告書30選  発行:株式会社商事法務
 執筆経緯にあるように、近時の主要な調査報告書の要点、そこから得られる教訓がコンパクトにまとめられています。
 本書に示されているとおり、次の利用法がおすすめです。
 ① 自社で発生するリスクが高そうな不正類型の項目を優先的に読む
 ② 自社と同業界の項目を優先的に読む
  「企業文化に対する監査」について活用する場合は、特に「不正の発生原因」、「再発防止策」、「発覚の経緯」に注意して読むとよいと思います。
 
2.第三者委員会報告書30選の内容
 30選の内訳は次のとおりです。( )は件数
 ① 会計不正(8)
 ② 品質偽装(5)
 ③ ハラスメント(1)
 ④ 労働管理の不備(1)
 ⑤ 反社排除不十分(1)
 ⑥ インサイダー取引(1)
 ⑦ 海外贈賄(1)
 ⑧ コンプライアンス違反(12)
 
 それぞれのバックグラウンドが異なるので、ここではそれぞれの問題の発生原因等に触れることはしませんが、不祥事を防止するのに形だけのガバナンスを整えてもダメだということは共通していると思います。

◇納得のトップバッター
 「第三者委員会報告書30選」で最初に取り上げられているのは、多額の負債を粉飾決算で処理していたオリンパスです。30選のなかでもっとも古く、調査報告書は2011年に公表されています。不祥事が発覚した際には、企業はどのように対応すべきかに関しても学ぶべき点は多く、トップにふさわしい案件だと思います。
不正に毅然と対峙したイギリス人のウッドフォードは社長職を解任されましたが、後に捜査の手が入り、関与した経営陣には巨額の賠償金を課す等の判決が確定しています。
 復帰が叶わなかったウッドフォードは、「解任」(早川書房 2012)の中で事件の経緯等を詳らかにしています。ノンフィクションの読み物として読みごたえのある1冊です。ちなみに彼は同書の中で、この第三者委員会報告書を「実に見識の高い報告書」(174頁)と評価しています。


2022-06-12