改善活動に取り組む上でのヒント -DX推進のための環境整備- |
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ずいぶん以前のことになりますが、コールセンターのQCサークル活動のアドバイザーとして、チームを指導したことがあります。着任してすぐに問題点を洗い出し、人が対応する架電件数を大幅に削減しました。やり切った感があったので、「来年のいいタマが思いつかない」という話をしたところ、それを聞いたある先輩が、「乾いた雑巾でも強く絞れば水は出る」と言われました。 たとえ話として面白いとは思いながらも、やるべきことはすべてやったという自負もあって、その時は腹落ちすることはありませんでした。 先日 、Japan IT Week春(RX Japan株式会社主催)でデジタル変革とDX推進に関する講演を聴いて、長らく忘れていた「乾いた雑巾」の話を思い出しました。 講演で登壇したのは、経済産業省が昨年7月に公表した「DXレポート2.2(概要)」を取りまとめられた(執筆した?)お二人です。DXはデジタルトランスフォーメーションの略です。経済産業省ではDXを、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」 と定義しています。 DXを標榜して提供されるサービスには、単にプロセスをデジタルで置き換えただけというものも多数あります。収益を生み出すのであれば、それも悪くないと思うのですが、国際競争力の維持を担う経済産業省としてはもっと大胆な変革をDXと捉えているようです。先の寸言で言えば、雑巾をなくすような変革ということかと一人合点した次第です。 昨年12月に、今回と同じRX Japan主催の建設DX展がありました。特に建設業は他の産業と比べて技能者の不足は深刻で、デジタルを活用した生産性向上は喫緊の課題です。 どの企業ともITの活用は最重要課題と捉えていますが、現場監督の中には仕事のやり方を変えることへの抵抗感が強い人が多いという実態があります。現場監督にいかにその便利さを実感してもらうかが、デジタル化を進めていく上でのカギとなります。 昨年秋から暮れにかけてある研修会で、建設DXあるいは建設デジタルテクノロジーに関するサービスにどのようなものがあるかを調査しました。プロセスやそれをさらに機能別に整理すると、調べたサービスの数は150以上になります。この作業を通じて、例えば設計・施工モデルの点群を合わせて施工状況を確認するサービスのように、革新的なサービスが次々と登場しているとあらためて認識しました。 大手デベロッパーでは、施工管理者を定期的に大学等に派遣し、リスキリングの機会を提供しているところもありますが、中小工務店でそうした機会を提供するのは容易ではありません。先述の建設DX展や建設・測量生産性向上展(こちらも「次世代を担う、最先端技術が一堂に」をうたい文句にしています)等にキーマンとなる現場施工管理者を派遣するのも、理解を深めてもらうための第一歩として有効だと思います。 DXと呼ばれるようなあらたなテクノロジーは、トップダウンで導入すると上手くいかずに、結局は使われなくなってしまうという話をよく耳にします。導入成功へのアプローチは企業それぞれの事情によりますが、ひと工夫もふた工夫もいるのは間違いないと思います。 2023-04-09 |