SDGsの目標をISO9001(品質マネジメントシステム)で管理する~工務店を例に~ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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Part1 工務店がSDGsに取り組むメリット
・SDGsとは
・ISO9001(品質マネジメントシステム)とは
・課題やリスク分析において Part1 工務店がSDGsに取り組むメリットSDGsとはSDGsは、2015年9月にすべての国連参加国で採択された国際社会共通の目標で、中長期的に目指すべきゴールを様々な視点から示したものです。![]() 図表1 SDGs 17のゴール SDGsと工務店経営工務店の日常の事業活動は図表2に示すようにSDGsの各ゴールと密接に結びついており、持続可能な社会の実現に向けて大きく貢献することが可能です。特に17ゴールの内、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」や、ゴール12「つくる責任つかう責任」は、工務店事業活動の基本をなすものです。それ以外のゴールも、工務店の様々な経営課題を浮き彫りにし、解決のためのヒントを与えてくれるものです。
SDGsの取り組み方SDGsに取り組むための具体的な方法やルールは定められていませんが、ひとつの方法として次のようなやり方が紹介されています(末尾参考資料1)。
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図表3に示すように、横軸に自社にとっての重要度をとり、縦軸に顧客や地域社会にとっての重要度をとった二次元の図を作り、この図の中に今後取り組むべき事項を位置づけていきます。この時、図の右上の領域に位置付けられる取組事項ほど重要性が高く、優先的に取り組むべきものとなります。 ![]() 図表3 今後優先的に取り組む事項の整理 工務店がSDGsに取り組むメリット工務店がSDGsの理念を経営計画に反映させ、積極的に取り組むことは、顧客に質の高い住宅を提供し、地域社会に貢献し、工務店としてのブランドイメージを高めることにつながります。SDGsが世の中に浸透することにより、取組みが不十分である場合は、SDGs後進企業のラベルを貼られ、ビジネス機会を逃すリスクがある点にも留意が必要です。SDGsへの取組みは、リスクマネジメントの強化そのものという一面もあります。 Part2 ISO9001(品質マネジメントシステム)とSDGsの関係ISO9001(品質マネジメントシステム)とはISO 9001は、品質マネジメントシステム(Quality Management System)に関する国際規格です。ISO 9001:2015における品質マネジメントシステムは、よい製品・サービスを提供すること、及びそれを管理する組織の仕組みのことです。よい製品・サービスとは、法令等に適合し、顧客が要求する製品・サービスを提供することです。ISO 9001:2015における品質マネジメントシステムは、よい製品・サービスを提供することにより「顧客満足の向上を図る」ことを目的としています。品質マネジメントシステムとSDGsの関係ISO9001:2015の序文で、品質マネジメントシステムの採用は、「持続可能な発展への取組みのための安定した基盤を提供しうる」としており、これはSDGsの基本理念そのものであり、品質マネジメントシステムがSDGsの達成に貢献しうることを意味しています。ISO9001:2015の 6.2.1では、品質目標は「顧客満足の向上に関連している」ことを満たさなければならないと定めています。顧客に質の高い住宅を提供することは、工務店がSDGsに取り組む際の柱のひとつであり、顧客満足の向上と密接に関連しています。 ISO9000:2015の3.7.1の注記2では、目標に関して以下の補足説明がなされています。 ・目標は、様々な領域(例えば、財務、安全衛生、環境目標)に関連しうるものであり、様々な階層で適用できる また注記4で品質マネジメントシステムの場合、「品質方針と整合のとれた品質目標を設定する」と定められています。Part3 SDGsの目標を品質マネジメントシステムで管理する意義課題やリスク分析においてISO9001:2015の6.1では、品質マネジメントシステムの計画に当たっては、外部及び内部の課題を明確にし、リスク及び機会を決定することを定めています。ツールとしてSWOT分析が用いられたりしますが、具体の気付きを提供してくれるかという観点でみた時に物足りなさを感じるかもしれません。SDGsでは、17のゴールのほかに、計測可能な行動目標として169のターゲットが設けられています。これに関しては工務店に特化した目標候補となる活動事例が末尾で紹介している参考資料1に掲載されています。 品質マネジメントシステムの課題やリスク分析作業において、SDGs計画策定の検討過程で明らかになった事項を反映させることで、品質マネジメントシステムをより高度化することができます。 パフォーマンス評価においてISO9001:2015の9.1で、監視、測定や分析・評価について定めています。測定したデータは顧客満足度や計画が効果的に実施されたかなどの分析に用いられます。SDGsにおいては、達成に向けた進捗状況を定量的・定性的に計測するために230以上の指標が国連統計委員会により提案されています。しかし目標が多岐にわたるため、企業レベルの取組になじまないものも含まれています。これに関しても工務店に特化した指標が末尾で紹介した参考資料1に掲載されています。 すぐれた指標を設定することができれば、SDGs及び品質マネジメントシステムで策定した計画の進捗状況を、有効的かつ効率的に管理することができます。 レビューにおいてISO9001:2015の9.3では、あらかじめ定められた間隔で、品質マネジメントシステムをレビューしなければならないと定めています。SDGsで策定した経営計画の進捗状況は、設定した指標を用いて計測・評価します。計測・評価を実施した後は、計画の策定時や前回フォローアップ時の結果と比較して考察します。この結果を踏まえて、必要な場合は目標や指標の見直しを行います。 指標を用いて進捗管理をする作業は継続して発生するため、品質マネジメントシステムに組み込んでルーティン化しておくと後々の負担が軽減されます。 SDGsの目標を品質マネジメントシステムで管理する意義ここまで述べてきたとおり、課題やリスク分析、パフォーマンス評価、レビューのいずれのプロセスにおいても、SDGsで策定した経営計画を品質マネジメントシステムで管理するメリットがあります。品質マネジメントシステムでは、品質目標の設定は組織のすべての部門でしなければならないということではありませんが、営業部門などで目標が単なる「売上増加や利益向上」としていることが少なからずあります。 品質目標は「顧客の視点」から見た品質に関連していなければならないので、単なる売上増加や利益向上だけでは、品質目標として要求事項を満たしているとは言えません。 SDGsに貢献するという経営方針を掲げることで、新たな視点での品質方針とそれに合わせた品質目標設定が可能となります。例えば「ZEH・LCCMの普及(成約率XX年までに〇%)」のように顧客の利益を図りつつ地球環境にも配慮した品質目標等が考えられます。 SDGsと品質マネジメントシステムとの相乗効果で、品質マネジメントシステムがより深化したものになることを期待しています。 ■参考資料
2020-03-30 関連記事:マネジメントシステムはSDGsを管理する有力ツール |