「企業文化に対する監査は重要」たとえそれが明示的にではなくても |
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企業文化に対する監査の重要性が言われ始めたのは、ここ4、5年のことだと思います。企業の不祥事や事故に関する報告書には、必ずと言ってよいほど企業文化や企業風土に問題があったとの指摘がみられます。重大な事故等を未然に防止するには、企業文化や企業風土に問題がないかを点検する必要があることは(誰がやるかは別にして)論理的に明らかです。 ある研究会が行った調査*によると、62%の企業は、企業文化監査について「実施したことがない。当面実施または検討する予定はない。」と回答しています。その理由として、「内部監査部門に企業文化を監査するノウハウがないから」(35%)がもっとも多く、次いで「経営層が企業文化の監査が必要だとは考えていないから」(18%)、「社内に企業文化の監査を受け入れる用意がないから」(18%)となっています。確かに、内部監査部門が「企業文化に対する監査を実施する」と明言して行うのは、メソッドも評価基準も確立されていない中では、監査をする側もされる側もハードルが高いのかもしれません。 大事なことは「企業文化まで踏み込んで監査している」という意識を持っているかどうかだと筆者は考えます。不祥事や事故の際に行われる原因分析はリアクティブな問題管理ですが、企業文化の監査は重大な事故を未然に防ぐことを目的としたプロアクティブな問題管理と考えるとよいかもしれません。例えば次のようなやり方で進めるとよいと思います。 一つは、問題が起きた時に公開される第三者委員会報告書等に記載されているような企業文化や企業風土が自社に存在しないかを確認する方法です。 もう一つは、ヒヤリハット事例を収集し、ヒヤリハットの段階で真の原因を追究する方法です。ここでいうヒヤリハットは労働災害のようなヒヤリハットではなく、大事には至らなかった顧客からのクレームや失敗等です。それらの真の原因を追究することを通して企業文化の問題の有無を洞察します。もしヒヤリハットを隠す、あるいは隠すまではいかなくても上にあげにくい雰囲気があるようであれば、そのこと自体が問題と捉えるべきだと思います。 企業文化を対象とした監査は、経営陣にどう受け入れてもらうかなど様々な課題が想定され、やりにくさはあるかもしれませんが、通常の業務監査の中で企業文化に思いを馳せるというところからのスタートで構わないと思います。先ほど触れた研究会でも述べられているように、「試行錯誤しながらも、まずは取り組むことが重要」です。 *調査は、IIA個人会員セミナー:「企業文化に対する監査の現状と考察」(2021年12月)資料より 2022-01-08 関連記事:「企業文化に対する監査」について考える(その1)~ヒヤリハット事例で学ぶ監査の着眼点~「企業文化に対する監査」について考える(その2)~第三者委員会調査報告書から学ぶ~ |